仕事で昔の彼女の実家の近所に行った。
俺のバイクの後ろに乗って来たな。
元々ペーパーライダーだった君が俺のバイクに触発されて買ったバイク、
もうこのガレージの中には無いだろう。
初めて君の実家に行った時、
お嫁に行ったお姉さんと、
間もなく結婚する予定の妹さんが実家に集まって、
お袋さんと親父さんと一緒にもてなしてくれた。
俺の足で腰を振ってもてなしてくれたワンちゃん、
朽ち果てた犬小屋があったからもう亡くなっちゃったんだろう。
強がりで俺の方から君を拒否したけど、
やっぱり我慢出来なくて実家に戻った君に会いに真夜中に実家近くの無人駅までバイクて行って、
同じくバイクで無人駅まで来てくれた君と仲直りした、
そんな事を思い出してしまった。
五年前、朝の通勤電車で君を見つけて、
ああ今はこの辺に住んでるんだって思った。
当時既に結婚していても不思議じゃない歳だったけど、
結婚してるかどうかは知る由もない。
仕事も生活も変わったけど、
俺はまだあのバイクに乗り続けてる。
君にされた仕打ちを忘れる事は出来ないけど、
屈辱や反論や、無様にすがりつく気力はなくなった。
話し合う余地も無く、一方的に去っていった君の最後の言葉は忘れていない。
「絶対幸せになってね」。
一方的に去っていくのに、
なんでそんなセリフが出てくるのか、
当時も今も君の気持ちを理解する事は出来ないでいる。
「もう君を好きではなくなってしまったんだよ」の言葉の後、
荷造りされた君の荷物に最後のメッセージを添えたけど、
その返事どころか、その後は会話をする事すら叶わなかった。
実は仕事が辛くて、
一番誰かに支えて欲しい時の出来事だったった。
この出来事を機に俺の人生は下り坂の一途で、
そして今こんな状況。
全てが君のせいだなんて思ってないし、
今君に会えたとしても、あれから今までの事を話す気持ちにもならないだろう。
でも、あの頃を機に人生も性格も変わった。
時間が元に戻る事はないけど、
もしやり直しがきくのなら、せめてチャンスを与えてほしいと思うよ。
少なくとも、
こんな気持ちで・こんな形で・こんなに時間が経っているのだから、
ここには来ないで済む人生を送りたい。
あれから幾つか恋もしたけど、
その半分くらいは自ら退く恋ばかり。
傷つくのが恐くて目を背けてばかり。
・・・・・・酔ってるな。寝よう。