気持ち次第なのは分かってるけど、
オヤジへの対応について、
どんどんハイレベルな事になっていくにつれ
「俺が我慢すればいいのかなあ」
という思いに駆られる瞬間がある。
俺がやる事成す事全てが実にならず、
オヤジの金を少しだけ拝借して逃げちまおうとか、
俺か第三者を成年後見人にして、
オヤジを禁治産者にして施設に入れる事までも真面目に考えてる。
考えてるんだけど、
そこまでするべきだろうかとも思う。
費用対効果の問題もある。
俺が手間暇をかけてこれらの事を試みたところで、
法的に「まだそこまで出来るレベルではない」という判断が下されたら、
これは俺が割に合わない。
躊躇してると俺自身がますます壊れちゃう訳だし、
もうそんな甘っちょろい事を言ってるレベルではない事は分かってる。
でも、
先日オヤジと旅行したりする間柄の人に本人説得の協力を求めて、
一旦は協力を約束してくれたのに、
後日電話をしたら、厄介事には関わりたくないって態度丸出しで一方的に電話切られた。
多分その人にしてみると、
俺の訴えてる事・俺が体験してきた事が信じられない側の人なのかもしれない。
明日オヤジの、四年前の前立腺ガンからの主治医の診察に、
俺と叔母さんが同席してオヤジ本人に痴呆の治療を受けるように話すんだが、
この主治医も前記の人同様に
「息子さんの言う事が信じられないんだがなあ」
という側の人なんだな。
多分ロクな後押しは期待出来ない。
それどころか主治医のほんのささいな言動だけで、
オヤジの頭の中では「それみた事か！」となってしまう予感がする。
オヤジの頭はオセロみたいで、
どれだけ自分にマイナスな事を言われたり、
どれだけ自分にマイナスな状況になっても、
自分を「否定しない」ほんの些細な事で、
両サイドが白くなって、中ほどの黒が全部白く裏返ってしまうんだよなあ。
明日、主治医の診察後に精神科の方の病院に行く事すら難しいと俺は思ってる。
ましてや主治医に諭されて痴呆の治療を始めるなど、
有り得ないとすら俺は思ってる。
だから、もう俺は金を拝借してこの家から逃げる事や、
痴呆とアルコール依存症の診察を元に成年後見人制度を利用してオヤジを強制的に施設入所させる事しか、
問題解決は有り得ないと本気で思ってる。
でも、意志が弱い自分が躊躇させる。
だれかに背中を押してほしいんだが、
俺が一人で決めて、俺が一人で行動しなきゃならないのだろう。
・・・そもそも！なんでこんな苦労をしなきゃならないんだろう！。
それを考えただけで、怒りじゃなくてため息が出る。
怒りだけだと、オヤジに手が出ちゃう事が分かってるから、
俺の中の優しい部分がため息をつかせるのだろう。
こんな優しさなんかいらない。
いや、「優しさ」なんかじゃなくて、
「暴力はいけない」という良心なだけなのだろう。
自分の暴力は良しとして、
他者から暴力を受けると鬼の首を取ったように責め立てるオヤジを十代の頃から見てきたから、
暴力の愚かさを身に染みて分かっているんだと思う。
でも、これらが全て足かせになってる。
オヤジは絶対に改心なんかしない。
納得せずとも治療は受けるってのも、
まず無理だろう。
のれんに腕押し、
空気を掴むようなもの、
馬鹿は死んでも治らない、
なのだ。
情け容赦は俺自身の首を絞める以外の何者でもない。
どうか！俺に甘っちょろいヒューマニズムなんかじゃなくて、
真の勇気と力を！
