痴呆症のオヤジの話しだが、
「車の任意保険の満期日が近づいている。車の３ヶ月点検や６ヶ月点検も出せないでいる。車の鍵を返すか、お前がお金を負担して点検に出せ。話をしたいのにお前は俺を避けてばかりいてお話しにならない。車屋や保険会社も困っている。他人に迷惑をかけるな」
という旨のメモが昨日から俺の目に触れる所に置かれている。
痴呆が発覚して運転にドクターストップが出ているのだが、
未だ本人は
「お前が一方的に訳の分からぬ事を言って暴力を振るい、訳も分からず病院に無理やり連れて行き、車の鍵まで取り上げてしまい、俺も周囲の人も困っている。何故そんな事をするのか理解が出来ず、かといってお前と話をする事すら出来ない。俺は別に困る事もなく普通に生活する事が出来るのに、お前のお陰で大変不便であり困っている」
という認識のままである。
この冬にあれだけの事になりながら、現状に対する理解も、自覚も、改心も無い。
自分が見つけて、自分の意志で看てもらっている心療内科の診療所には月一回行って薬を処方されてるようだが、
そもそもそこだって俺が市の保健師に相談をして、保健師から
「息子さんに連れていかれた総合病院の精神科やデイケア施設が嫌なのであれば、こちらの心療内科に行かれてみてはどうですか？」
と勧められて行きだしたのに。
時間が経つにつれて自分に不都合な記憶が、
自分に有利な様に変わっていく、
毎度の事だ。
しかも他者の話も聞かず、
現状の認識すら正しく出来ない、
これも毎度の事だ。
もう車の運転がオーケーになる事自体有り得ないんだが、
何度説明してもそういった現実も理解出来ない。
それどころか未だ車を運転しようとしている。
運転出来ないのは俺が鍵を取り上げてしまったからだという認識。
デイケアに自分で車を運転して行こうと言うくらいなんだが、
全ては痴呆のせいなんだと考えると、
この先本人が納得や理解をする事はないのだろう。
揉めたくないので、せめて車の件くらいは話そうかと思ったが、やめた。
馬鹿でも分かるように手紙に書いて渡そうかとも思ったが、
どうせ理解すら出来ないだろうから、これもやめた。
引き続き無視で、家庭内別居を貫こう。
それが俺自身の為だ。
本人が自分の意志で車を誰かに譲るとか任意保険を更新する事を阻害はしない。
保険の更新なんて車無くてもオヤジ一人で出来る事だし、
自分の意志で車を処分なり譲るなりするというのであれば協力はしてやろうと思う。
でも現実にはそれらの事は全く期待出来ず、
鍵を返せば運転する事はもちろん、
「息子が改心して鍵を返した」という認識になってしまう。
そもそも、もう運転出来ない、誰かに車を譲る訳でもないのだから、
定期点検など無意味。
車が無くても保険の更新くらい出来る事すら分かってなくて、
「保険の更新が出来ないから鍵を返せ」という認識の痴呆症なのだ。
アルコール依存症と痴呆症でドクターストップが出ているのにも関わらす、
改心も状況の理解も出来ないまま車の運転をしようとする人間を手助けするなんて、
そんな反社会的な行為は俺には出来ない。
